佐藤幹夫の数学

ジュンク堂をぶらついてるときに見かけて、「佐藤幹夫の数学」を購入。

佐藤幹夫の数学
佐藤幹夫の数学
posted with amazlet on 07.09.24
佐藤 幹夫 木村 達雄
日本評論社 (2007/08)
売り上げランキング: 5169
おすすめ度の平均: 5.0
5 天才の数学の秘密

数学界では相当な業績をお持ちの大先生なんですが、僕は数学が専門じゃないんで、その人となりまでは知らなかったんですが。この本を読んでみて、良くも悪くもすごい人だと感じた。
既存の理論の枠組みを打ち破るような独創的な仕事をしてるんですけど、にしても、既存の理論を批判しすぎるというか。普通、天地をひっくり返すような独創的な新理論を考えたとしても、その新理論で今までの理論を説明するとかするもんなんですけど。例えば、量子力学ニュートン力学とは見かけ上全く異なってますけど、量子力学の枠組みで今までニュートン力学を使って説明されていた現象も説明可能で、それが確認されて始めて量子力学という新理論に信憑性が生まれたわけで。「佐藤幹夫の数学」に書かれた「自己を語る」や「数学を語る」姿勢を見てると、そういうのがない。既存の(20世紀に入ってからの)理論のとってる視点は何かおかしい、自分の新しい(むしろ、原点回帰な)視点こそ数学の本質だと。
「佐藤の超関数」っていうと、今となってはかなり有望視されている理論なんですけど、これに最初に注目しはじめたのは日本じゃなくてフランスの学派らしいっていう話を聞いたことがあります。これも、↑みたいな、既存の理論に対する批判的な姿勢が災いしたのかなぁ。

まあ、でも、やっぱり偉大な先生の言葉にはいい言葉も多い。「『自然は単純である』は非常に真実」って話は、全く持ってそのとおりなんだと思う。現代科学は複雑化してるように見えるかもしれないけど、そりゃ、必要とされる数学のレベルが上がってて難しくみえるかもしれないけど、むしろ、より単純に自然を言い表せるようになってるんですよね。例えば、一般相対性理論なんて、かなり難しい数式はでてきますけど、主張としては、「物体は最短経路を通って移動する」ってだけ。ニュートン力学で言うところの慣性の法則を一般化しただけなんですよね。きわめて単純。